シャーロック・ホームズ

SHERLOCK HOLMES in MB-Support
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映画「シャーロック・ホームズ(Sherlock Holmes)」を見ました。




私は”ジェレミー・ブレット”主演のグラナダTV制作『シャーロック・ホームズの冒険』シリーズ(*1)が好きですが、ガイ・リッチー監督の映画『シャーロック・ホームズ』は、それまでのイメージを払拭したホームズが登場すると囁かれていたので、非常に心配していました。ホームズを演じるのは、映画『アイアンマン』でお馴染みの”ロバート・ダウニー Jr”、相棒のワトソンを演じるのは”ジュード・ロウ(*2)”です。役者のルックスは良いのですが、シャーロック・ホームズのイメージは”無い”かなと。しかし、映画を見た率直な感想は、このホームズとワトソンも”有り”だと思いました。

推理力と腕力で事件を解決する豪快なホームズもさることながら、ワトソンの能力も高く描かれています。そもそも、『聖典(*3)』の二人のイメージは、小説を読んだ人ぞれぞれ違います。しかし、イメージを決定づけているのは、挿絵画家”シドニー・パジェット(*4)”が描く痩身のホームズと、原作者のアーサー・コナン・ドイルに似たワトスンです。あるいは、アニメ『名探偵ホームズ(*5)』の擬人化した犬かも知れません(笑)。小説『まだらの紐(The Adventure of the Speckled Band *6)』では、ロイロット博士が曲げた火かき棒を元のようにまっすぐに延ばした、さらに、日本武術のバリツ(*7)の達人とありますし、ワトソンは第二次アフガン戦争で軍医(*8)をしていたので、力強い二人の方がイメージに合っているのかも知れません。

石畳の町中を馬車が疾走するシーンから、この映画のスピード感を楽しめます。急かされているようなバックグラウンド・ミュージック(*9)に、馬車がカーブを曲がる様子を御者越しに撮影した映像は緊張感がありました。原作の『踊る人形(The Adventure of the Dancing Men *10)』でホームズは、「中心の推理を省いて出発点と結論だけを人に聞かせれば、相手を驚かす効果は容易に上げられるだろう」と説明しています。推理中のホームズの頭の中をどう描写するかは、実写版の楽しみの一つですが、この映画では二つの描写を楽しめます。一つは、出発点から結論までの推理の過程をゆっくり観客に見せています。もう一つは、ホームズの目で見た証拠から、推理の断片を素早く切り替えて見せています。


ホームズの熟達した変装の描写にも抜かりがなく、馬車のシーンは直ぐに気が付きましたが、医者には騙されました。医者に変装したホームズを見破るメアリーの場面は、ロッキー2(*11)で目覚めたエイドリアンが、「勝って!」と懇願するシーンを思い出しました。ホームズの推理力は時に人を傷つけますが、素晴らしい人間関係を築いている映画でもあります。このメアリーとは、ワトソンの婚約者であり、原作の『四つの署名/四人の署名(The Sign of Four *12)』の依頼人です。私は『聖典』に二人が結婚したとは無いと勘違いしていましたが、最後にワトソンが「モースタン嬢は僕の妻になる承諾をしてくれた」とあり、ホームズは「それに、あの人が僕の仕事を手伝ってもらっても、ずいぶん役に立つと思う。」と言っています。これが、第二弾の『シャドウ・ゲーム(*13)』へと続くわけですね。右上の商品は既に売り切れていますが、グラナダ版のメアリー・モースタンが真ん中の人です。


そして、忘れてならないアイリーン・アドラーの存在です。ホームズを出し抜いた唯一の女性で、原作では『ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia *14)』に登場します。ホームズと同じく推理力と行動力に長けたアイリーンとのコンビは、ルパン三世と峰不二子の関係になりがちです。右の商品は既に売り切れていますが、グラナダ版のアイリーン・アドラーが左の人です。


物語はブラック・ユーモアで、呪いじみた犯罪ですが、原作の『赤毛組合/赤髪組合(The Red-Headed League *15)』でホームズの台詞にあった、「特異な事件ほどからくりは幼稚」です。天地茂が演じる明智小五郎よろしく、最後に全ての謎を分かりやすく説明します。「粘土が無ければ煉瓦は作れない」の発言はありますが、「パイプ三服分の問題(Three Pipe Problem)」はありません。失笑を誘う場面もありますが、全体的にハラハラさせられて、神秘的な謎に困惑もします。奇怪な事件ではありますが、スクリーンに映し出される証拠を見逃さなければ、ホームズが暴く前に解明できるかも知れません。映画『天使と悪魔』を見ていなければ・・・。


映画『シャーロック・ホームズ』オフィシャルサイト

映画「シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム」を見ました




註釈

*1:1984 年 4 月 から 1995 年 4 月(日本では NHK で 1985 年 4 月から 1995 年 2 月に放送)までの 10 年にわたりテレビで放送されたテレビシリーズです。全 41 話のシャーロック・ホームズを演じるのはジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)。ワトスン役はシーズン 1 から『最後の事件(The Final Problem)』のシーズン 2までをデビッド・バーク(David Burke)が務め、『空き家の怪事件(The Adventure of the Empty House)』のシーズン 3 からはドワード・ハードウィック(Edward Hardwicke)が演じています。

*2:ワトスン役のジュード・ロウ(David Jude Heyworth Law)さんは、19 歳のときにグラナダ・テレビ制作『ショスコム荘』に出演しています。

*3:『聖典』とは、イギリスの作家 ”Arthur Conan Doyle(アーサー・コナン・ドイル)” が著した 4 つの長編と 56 の短編の『シャーロック・ホームズ』シリーズのことです。それ以外の作家が著した『シャーロック・ホームズ』物語を『パスティーシュ(仏: pastiche)』と呼び、『聖典』と区別しています。『正典』とも呼ばれています。

*4:シドニー・エドワード・パジェット(Sidney Edward Paget)ウィキペディア

*5:『名探偵ホームズ』は、イギリスのアーサー・コナン・ドイルの小説『シャーロック・ホームズ』シリーズを原作にしたテレビアニメです。日本でテレビ放送された期間は 1984 年 11 月 6 日から 1985 年 5 月 20 日で、物語は全 26 話あります。名探偵ホームズ Blu-ray BOX Anime Sherlock Holmes

*6:『まだらの紐』は、『シャーロック・ホームズの冒険』(1892年、短編集)に収録されています。

*7:『空き家の冒険(The Adventure of the Empty House)』でホームズが語った日本の柔術(I have some knowledge, however, of baritsu(バリツ), or the Japanese system of wrestling,)。Japanese system of wrestling とは相撲のことか?レスリングのことか?原文に「Japanese」とあることは確かですが、バリツが柔術のことなのか何なのか、はっきりしていません。『空き家の冒険』は『シャーロック・ホームズの帰還』に収録されています。

*8:ワトスンが軍医をしていたことは、ホームズとワトスンが出会う物語『緋色の研究/緋色の習作(A Study in Scarlet)』にあります。

*9:馬車が疾走場面で流れた曲はサントラの 7 曲目『Marital Sabotage(黒魔術の儀式)』です。

*10:『踊る人形(The Adventure of the Dancing Men)』は『シャーロック・ホームズの帰還』に収録されています。*7 を参照して下さい。

*11:シルベスタースタローン監督/主演のボクサー映画。

*12:『四つの署名/四つのサイン(The Sign of Four)』は、ホームズ物語の長編の一つです。

*13:2011年公開、「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム(Sherlock Holmes: A Game of Shadows)」は、『最後の事件』と『空き家の怪事件』を題材にした映画で、2009年のガイ・リッチー監督作品「シャーロック・ホームズ」の第二弾です。 [映画「シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム」を見ました] [ウィキペディア]

*14:『ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia』は『シャーロック・ホームズの冒険』(1892年、短編集)に収録されています。*6 を参照して下さい。

*15:『赤毛組合/赤髪組合(The Red-Headed League)』(1892年、短編集)に収録されています。*6 を参照して下さい。